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2014年2月 7日 (金)

「ブラック大学早稲田」(同時代社)出版にあたって

 本日2014年2月7日、マイニュースジャパンに連載した記事を大幅に加筆修正して「ブラック大学 早稲田」を出した。年収300万円の非常勤講師たちが早稲田大学・鎌田薫総長らを怒りの刑事告訴! 「非常勤講師5年で無期転換」阻止のための偽装選挙、コスト削減で授業を外部委託し偽装請負の疑い、労働法のプロが高度な知識をもつプロ(非常勤講師ら)に対して行なった前代未聞の出来事。今、早稲田大学で何が起こっているのか。明らかになる大学内身分制度の構造……。

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 1%のために99%を犠牲にする……。世界も日本も暴走しているが、大学もその例外ではない。もはや身分制度ともいえる非常勤講師の差別待遇を伝える本である。

 まず誰よりも大学・短大・高専・高校などで教える非常勤講師の方々にこの本をとどけたい。そして教育関係者、労働運動関係者にも。

 カネの論理を優先しすぎ、まるで利益追求の企業のような大学がこのまま暴走したらどういうことになるか。これから学ぶ若い人たちのためにも、改善させたい。大学の非正規差別と切り捨てをストップしなければ、今まで以上に日本全体で差別が拡大してしまう。

 この本では、偽装選挙までされて最高5年で雇止めの就業規定を強行された非常勤講師たちが、不利な状況の中で団結し、少しずつ、わずかながらも権利を回復していくプロセスも書いている。早稲田ユニオンが、わずか9か月で10人から120人超に拡大していることにも驚いた。

                    まえがき

 

 我々は家畜ではなく奴隷でもない。それどころか、非常勤講師のほぼ全員が大学院卒以上の高学歴者であり、理論や議論、誠意に対して理性的に応じる知性も教養もあると、大学自らが認定したはずである……。

 

 2013年6月21日、早稲田大学で働く15人の非常勤講師が、鎌田薫総長ら大学理事18名を労働基準法違反で刑事告訴した。冒頭の一文は、告訴状の一部であり、非常勤講師たちの人権宣言でもある。これまで筆者は、解雇、パワハラ、労災、など雇用・労働問題を数多く取材してきたが、「我々は家畜ではなく奴隷でもない」と自ら奴隷解放宣言・人権宣言をして戦う人々に接したのは初めてだ。この宣言を見て、何が何でも書籍化し、社会に大学内身分差別の実態を伝えたいと強く思ったのである。

 034月1日に改正労働契約法が施行され、期間を定めて契約する労働者の契約期間が通算5年になると、期間の定めのない無期契約に転換できる権利を労働者は得た。給料その他の条件はそれまでと同じであっても、5年経てば無期契約労働者、つまり限りなく正社員に近い状態になることが可能であり、雇用の安定に貢献する法改正のはずであった。

 これまで早稲田大学には非常勤講師の就業規程がなかったが、法改正を機に非常勤講師の契約を通算で最長5年とする就業規程を決め、ただちに施行した。改正労働契約法施行と同日の4月1日のことだった。就業規程を変更したり制定するには、労働者の意見を聞かなくてはならない。労働者の過半数を占める組合がない場合には、過半数代表者選出選挙を実施し、選ばれた代表が意見書などのかたちで意思表示することが、労働基準法第90条に定められている。

 早稲田大学は、過半数代表選挙実施の通知を2月14日に非常勤講師らが使用するメールボックスに公示書や投票用紙を投函したと説明する。だが、大学の非常勤講師は、在学生の試験が終われば大学に来ないし、その時期は入学試験中であり、大学はロックアウト(閉室)されて構内への立ち入りは厳しく管理されていたから、投函直後に見た非常勤講師はいない。

 要は、当事者である非常勤講師が選挙の存在すら知らないまま、過半数代表選で7名の代表者(全員が専任教員)が選ばれ、5年で雇い止めの就業規程が強行されてしまったのである。要は、5年後に非常勤講師が無期契約に転換するのを阻止するための偽装選挙ではないか、と15人の非常勤講師が刑事告訴したのだった。(後略)

「ブラック大学早稲田」(同時代社)

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