予告(前編)「トヨタの闇~利益2兆円の犠牲になる人々
MyNewsJapan に連載していたトヨタ自動車の記事が「トヨタの闇」として単行本になる。同サイトの渡邉正裕代表との共著である。マスコミ最大のスポンサーであるトヨタのマイナス面をマスコミは指摘しない。おそらく刊行されても無視されるし、書評にもならないと思うので2回にわたってその一部を紹介する。
◇世界一企業、思想統制の実態
2007年の生産台数世界一が確実となったトヨタ。年間1千億円超と、全上場企業でダントツの広告宣伝費の萎縮効果は抜群。本屋には「おべんちゃら本」が並び、雑誌は広告と区別がつかない記事を書いてスポンサーに媚を売る。しかしその実態は、欠陥車をどこよりも多く作り、どこよりも多くリコールされる不良品メーカーである。
その労働現場は「自動車絶望工場」の時代を引き継ぎ、社員が工場内で若くして過労死しても労災すら認められず、正当な労組活動すら制限されるほど“思想統制”は行き届く。既存メディアがタブー視してきた、日本企業・日本社会の象徴としてのトヨタの本当の姿を伝える。
◇トヨタは本当に優良企業なのか(単行本はじめに)
トヨタ自動車の生産台数が2007年、ついに世界一になる。もちろん世間のイメージは“優良企業”。だが、そうとは言えない話も頻繁に聞くので、現場社員の取材を始めると、一様に口が堅い。私自身、2004年からの3年余りで、十数人に取材を断わられた。話せない理由は何なのか。
そんななか、知人のツテをたどって、辞めたばかりの元社員に話を聞くことができた。現社長・渡辺捷昭氏も輩出した中核部署、調達部門に4年弱、在籍していた人で、トヨタを語るには申し分ない人だ。
私は、以前から噂で聞いて気になっていた質問をした。
--トヨタの社員って、自殺者が多いとよく聞きますが、本当ですか。
元社員は、流暢に話し始めた。
「多いです。特に技術系のほうが多い。設計部門は長時間、1ヵ所に篭もるので、精神的に参って自殺に追い込まれます。納期にも追われますから。労組がタブーにするので公にはなりませんが。」
--ご自身の部署内では、いかがでしょうか?
「入社1年目、半年ほどの研修期間を終えて調達部門に配属となって間もない頃でした。同じ部署に配属になった同期の新人が、寮に遺書を残して消えたことがありました。それで、みんなで探し回ったんです。会社は、車のナンバーを割り出して、愛知県警に捜索願を出した。結局、“全国指名手配”みたいになって、高速道路で検問に引っかかった。東北方面で自殺するつもりだったようです。親に引き取られて、そのまま辞めていきました。真面目でクリーンなヤツだったから、ダーティーなウチの仕事に耐えられなかったんでしょう。」
この一例だけではなかった。
「自分が辞めた直後ですから、ついこの間のことです。37~38歳の社員が、社内のトイレで自殺しました。同じ部署なので、もちろん私も知っている人です。上司とウマが合っていなかったので、そのあたりで悩んでいたのかもしれません。詳しい原因は分かりませんが、亡くなったことは事実です。」
私は過去3年半で、現役の大企業社員を200人以上取材してきたが、これほどリアルに複数の「体験談」が出てきたのは、トヨタが初めてだった。いったい、この会社はどうなっているのか。
前出の元社員は、「プチ北朝鮮だった」「安定的地位を失う恐怖心をカネと換えていた」と的確な表現を交えて、解説してくれた。地理的にも隔離された状況で、巧みに思想統制されていくのだという。どうりで取材にも応じにくい訳だ。詳しくは、他部署の複数の現役社員への取材結果とともに構成した、第2章をお読みいただきたい。
一方で、資本主義社会で一番の権力者である株主の視点からは、トヨタが世界のモノ作り産業をリードする“優良企業”とされていることは疑いがない。
トヨタの本質は、まさにこの2面性にある。
レクサス・クラウンの高級イメージと、4畳半・築40年超のボロい寮に住む正社員。
人を大事に育てるイメージと、勤務中に過労死しても労災認定すらされない正社員。
性能が良いというイメージと、実は販売台数よりリコール台数のほうが多い事実。
生産台数世界一のブランドイメージと、海外での活発なリストラや反対デモ。
だが、年間1千億円超にもなる日本一の広告宣伝費で首根っこをつかまれたメディアは、トヨタの経営側に立った1面的な情報しか流せない。本屋には「トヨタ式」「トヨタ流」といった大本営発表情報に基づく「おべんちゃら本」ばかりが並ぶ。CMも含めれば、市場に出回る情報量は、99対1といったところだろう。
本書は、その2面性を持つトヨタの、普段は一般人の眼に触れないほうの部分にフォーカスをあてたものだ。いずれも事実であるにもかかわらず、トヨタを恐れ萎縮するマスコミには流れない情報ばかりである。
執筆にあたっては、経営側以外からの視点、つまり働く側や消費者の視点から見たトヨタについて、ニュースサイト「MyNewsJapan」で連載を続けている原稿を、構成し直した。弊社は広告収入ゼロを経営方針とすることで、トヨタをタブーとする必要がない。今後も随時、新着情報を更新していくので、トヨタ関係者からの情報提供を、引き続き、強く求める次第である。
(以上、共著者 MyNewsJapan代表取締役 渡邉正裕)
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