投票のポイント③自衛隊の組織ぐるみ選挙
ヒゲの隊長こと元陸上自衛隊の佐藤正久氏が自民党(比例)から立候補している。ホームページを見てみたら、この春先から連日のように全国各地の自衛隊施設で”講話”を行なっている。事実上、自衛隊による組織的で大規模な選挙活動だ。
◇軍人の政界進出
今年1月ごろに佐藤氏が選挙にでることをテレビで知った。そのときに「現場の苦労を政治はわかっていない。現場が報われるように」というような主旨のコメントをしていた。
現場とは、自衛隊が派遣されたイラクのことであり、派遣された隊員たちのことである。私はテレビで彼の発言を聞いて、「現場のためにということは、海外に派遣された日本軍のため、軍人のため」の政治を行ないたいのだと理解した。
憲法違反をして日本政府は自衛隊のイラク派遣を強行した。法的整備も不備で、半分以上の国民が派遣に反対していた当時の状況を考えれば、現場責任者であった佐藤氏の苦労は相当なものだっただろう。
そうした苦労を取り除くには、憲法を改定して自衛隊の海外活動を合法化することが一番だということなのだろう。現に、同氏のホームページには「時代に即した『新憲法』の制定」とある。
28年間、自衛隊内で隊員たちと苦楽をともにした同氏の心情として、そのような考えにいたることは(賛同はしないが)理解はできる。ただ、政治家として立つ以上、それだけでは許されない。
1月に退官したとはいえ、彼の頭の中身は軍人である。今回の選挙をきっかけに「軍部=防衛省・自衛隊の意向」を反映する政治にむけて一歩を踏み出したのだと私は理解している。
情報保全隊は市民への違法な調査活動を今も続け、防衛省には、反省もなければ改善する気もない。日本を自衛するのではなく、アメリカの下請けとしてアメリカの侵略戦争に参加させる部隊に改変しようと日本政府が画策しているのは明らかだ。
このような状況で、再び軍人が、肩で風を切って歩き始めている。
◇公務員の選挙活動に問題はないのか
さて、その選挙キャンペーンである。”講和”は昼間に行なわれ、体育館などに隊員が集められている。勤務時間中だ。実質的に自衛隊による政治活動だ。実際、特定の候補者を支援しているのだから。公務員の政治活動はできなかったのではないか。この点について詳しい人や専門家に聞いてみたい。
オフィシャル・ホームページには、自衛隊内の体育館などで迷彩服の隊員らを前に講話している写真がふんだんに掲載されていたが、さきほどページにアクセスしてみると、このような写真は取り除かれていて、門前で辻立ちの写真のみだった。
反対に、民主党・社民党・共産党など野党各党が、勤務時間の霞ヶ関の官庁の内部に入り、あるいは地方の県庁・市庁・公の建物内部に入って勤務時間中の公務員に対して演説や講話ができるのだろうか。
たとえば野党が労働組合関係者にアピールするとき、昼休時間に会社や工場や官庁の門前で演説をしたりすることはある。自衛隊内の”講話”は、毎回昼休みを利用しているのだろうか。
私個人の根本的な考えとしては、公務員の政治活動を全面的に禁止している現行法には疑問をもっていはいるのだが・・。
◇休日に政党ビラを配った公務員は逮捕
ある事件を思い出した。東京の目黒区で、国家公務員が休日に政党関係の印刷物をアパートに撒いた。この人物は、国家公務員法違反で逮捕されて起訴された。
休日にビラをまいただけで身柄拘束されて起訴された。一方、特定政党(自民党)の候補者を自衛隊内に招いて話をさせることは問題ないのだろうか。どう考えても、選挙期間中にこのようなことをするほうが、より政治的な活動だと思うが。
たぶん、法律(憲法・公職選挙法・自衛隊法など)の細かなことを検討したうえでやっているのだろう。それとも、野党勢力や市民の力が昔ほどないから、強行しているのだろうか。
自衛隊の組織ぐるみ選挙支援に関しては、
.選挙の断面 ”自衛隊ぐるみ”支援 元陸自イラク隊長の自民候補
隊員集めて「講話」連日 に書かれている。
◇自衛隊の国民監視活動と選挙
上記の記事によると、「佐藤まさひさ を支える会」の 文書が部隊司令から隊員に「回覧」されているという。
そして同会の顧問には、歴代自衛隊の上級幹部が名を連ねる。先ごろ自衛隊情報法全体による国民の監視活動が暴露されたが、関係者のなかには、その初代隊長も名を連ねている。
そうか。政府に同調しなかったり批判的な市民を監視しプライバシーを探る人々によって佐藤正久氏は支えられているのか。非常にわかりやすい。
◇消えたブログ~あるいは消されたブログ
この話題に関して興味深いブログを見つけた。「猫に小判~自衛隊内部を滅多切り~」という元幹部自衛官と名乗る人物のものである。
昨日朝(2007年7月19日朝)このブログにたどり着いたのだが、今日アクセスしたら、アクセスできない。いったい何があったのか。
このブログに書かれていたことは、自衛隊の組織的選挙協力について。隊内で選挙用に”教育”があり、講習会のようなこともやっている。それに関する文書まで掲載してあった。
要は、自○党に入れろという実質的命令がなされているという内容である。ブログに書いたご本人もそうしたことに関わっていたことが伺われる。もちろん「自民党に票を入れろ」などとは書かれていない。
◇自民党のための自衛隊
私が個人的に自衛隊出身者に話をきいたら「上官が選挙にいったか」と聞くので隊員が「まだです」と答えた。すると上官は、「(選挙に)行かなきゃだめじゃないか、共産党政権ができたらどうするんだ!!」と叱責したというのである。私は爆笑した。
もちろん、上官は「自民党に入れろ」とは言わない。
誰のための自衛隊なのか。誰を、何を、守るのか。
答えはひとつ。 自民党のための自衛隊である。
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