ZAKIと川田龍平の演説
参院選の投票日を目前にひかえて、いま私の住む東京中で各候補が街頭演説をしている。何人もの候補者の演説を聞いたが、そのなかで身体と心に染みこむような演説をしているのは、東京選挙区で無所属で立候補している川田龍平と全国比例区で9条ネットから立候補しているミュージシャンのZAKI(ざき)である。
◇「自分の言葉」と「私心のなさ」
川田龍平は、言わずとしれた薬害エイズ訴訟の原告。10歳で母親から感染していることを知らされ、19歳で実名を公表し、人生と生命をかけて闘ってきた人物である。実体験をもとに話すことばは、説得力があり、人の心を揺るがす。
「女性は子どもを生む機械」「アルツハイマー」「原爆投下はしょうがない」そして事務所経費疑惑にまみれた塩崎官房長官、バンソコウ大臣らとは違い、人間としての品格を感じるのである。
一方の9条ネット比例区のZAKI(ざき)も、自分の言葉でストレートに安倍戦争政策推進政権と全面対決する気構えを語っている。自作の歌と演説をおりまぜる効果は、ミュージシャンならではだ。
「みんなが知らないところで、おそろしい戦争推進政策が進められている」「貧乏人からカネをむしりとり、大企業と与党政治家はウハウハだ」「強行採決17回の安倍政権は独裁政権だ」「一緒に安倍政権をぶったおそう」・・・。
大柄で胆力があり、野太くよく響く声は、身体に直接しみこむような感じがする。
二人とも、私心がない。
◇民主党候補はなぜ迫力がないのか
それに対して、自民党の候補(今回、私は公明党の候補演説を聞く機会が今のところない)の演説には”澱み”があり、問題外。
さて、与党を追いつめる最大野党の民主党に期待したいところだが、いまひとつ訴えに迫力ない。それはなぜなのか。
理由は簡単。安倍政権と全面対決していないからである。いま、国民年金問題や大臣の相次ぐ失言が焦点になっているが、これらは、いわば”敵失”敵のエラーで幸運がもたらされたのだ。
もし年金や失言がなければ、今回の選挙の争点は憲法問題であった。自民党の憲法草案を読んでみると、国民に義務を押しつけ、国家に隷属しろと言っているにひとしい。自衛軍を持ち、いつでもアメリカと戦争をできる体制にする。政府が有事であると勝手に判断すれば、「自衛軍」が日本全国を治安管理すると明示されているのだ。戒厳令体制、軍事体制にして反対派をいつでも弾圧できる。
憲法は権力者が勝手なことをしないように、権力者を縛るものである。安倍首相を始め、自民党議員と候補者は、こういう立憲主義の初歩さえ理解していない。これだけでも、民主国家の議員失格である。
民主党は、こうした戦後民主主義を否定する自民党の憲法改悪を全面批判・全面対決できていない。ということは安倍政権の中枢・思想の中核を攻撃できないから、迫力がないのだ。
この点で、川田龍平とZAKは、憲法改悪と対決すると明白に語っている。しかも二人には私利私欲が全くない。そうしたもろもろの事情が、人の心に響く演説となって現れるのである。
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