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2007年7月 9日 (月)

参院選 自民党のB層戦略に注意せよ

 政府与党、とくに自民党に逆風が吹いているが、安心はしていられない。巨大な資金力・組織力・情報操作力をバックに何をしてくるかわからないからである。05年9月の「郵政解散j選挙」の悪夢=B層戦略を思い出すからである。

◇50パーセントを無視して独裁政治

 先日終了した国会では、与党の強行採決が定着し、国権の最高機関たる国会などは形式だけのものになってしまっている。今国会ではすでに国民投票法(5/14)を筆頭に、米軍再編法(5/23)、教育関連三法(6/20)、「改正」イラク特措法(6/20)などの!重要法案が強行採決された。

 事実上の独裁が許されるのは、2005年9月11日の小泉政権時代の「郵政選挙」で巨大与党が生まれたからだ。衆院選の小選挙区では、自民・公明が49%の得票率で76%の議席を獲得した。

 比例代表を含めても、民意は約50パーセントで二分された。小選挙区制の弊害があらわれ、50パーセントの反対票を全く無視しているのである。

  前回総選挙で与党が勝利したのは、自民党が「B層」の取り込みに成功したからだといわれている。

◇B層とは?

  B層とは、ありていに言ってしまえば「なんとなく政府与党を支持する頭の悪い人たち」である。

 私がそう言っているのではない。小泉内閣の郵政民営化政策の広報戦略を内閣府から(入札なしに約1億5000万円で)請け負った(竹中郵政担当大臣が懇意にしていた)「スリード」というPR会社による定義である。

 ということは自民党自身が、自分たちを支持する人たちを頭が悪いといっていることになる。

 このPR会社は、A層・B層・C層・・と有権者をカテゴリーわけし、

●B層(構造改革にどちらかといえば肯定的でIQが低い):主婦層、 子供、シルバー層を中心とする層。「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層」=「小泉内閣支持基盤」。

  と定義している。この層を狙って、メディアをつかって徹底的なキャンペーンをしたというわけだ。

 参院選挙を巡っても、これに近い戦略が練られているかもしれない。

 こうした自民党の「B層戦略」について、「チェチェンニュース」が書いている。大切であるし、興味深いので、以下に引用する。

 《スリードは、(1) 構造改革に肯定的か否定的か (2) IQが高いか低いか という基準で私たちを以下の4つのカテゴリーに分類していました。

 (a) A層(構造改革に肯定的でIQが高い):財界勝ち組企業や大学教授、マスメディア、都市部ホワイトカラーなどのエリート層。「民営化の必要性は感じているが、これまで、特に道路公団民営化の結末からの類推上、結果について悲観的な観測をもっており、それが、現状の批判的立場を形成している」層。

(b) B層(構造改革にどちらかといえば肯定的でIQが低い):主婦層、子供、シルバー層を中心とする層。「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層」=「小泉内閣支持盤」。

(c) C層(構造改革に否定的でIQが高い):構造改革抵抗守旧派

(d) D層(構造改革に否定的でIQが低い):「既に(失業等の痛みに より)構造改革に恐怖を覚えている層」

 スリード社のPR戦略では、このうちA層とC層は確信的に郵政民営化に批判的でIQも高いため、頭の悪い「B層にフォーカスした、徹底したラーニングプロモーション」が必要であるとされています。

「徹底したラーニングプロモーション」とは、テレビやラジオ、フライヤーなどの「彼らが受容しやすい媒体(ビークル)」を(2ちゃんねるも)活用した徹底的なイメージ戦略のことですが、資料を読んだ限りではほとんど「洗脳」や「調教」に近いと思います。

 スリード社が作成した資料は、2005年6月に国会でリークされ、竹中大臣の収賄疑惑とともに話題になりました。この資料はネット上にもアップされているので、ぜひ一度ご覧になって、できれば他の人にも広めてください。

 小泉政権が自らの支持者をここまでバカにしていたこと(B層のBはバカのB?)は、もっと多くの人に知られてよいはずだと思います。

 「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」
  
http://tetsu-chan.com/05-0622yuusei_rijikai2.pdf

●郵政民営化は誰のため?

 小泉政権はいったい何のために郵政民営化を進めようとしていたのでしょうか。2005年8月8日付の「ウォールストリート・ジャーナル」には、当時のマスコミ報道では表に出なかった興味深い記事が掲載されています。

 それは、「郵政民営化が実現すれば我々は3兆ドルを手に入れられるので、選挙で与党を勝たせるために日本のマスメディアを買収しても惜しくない」というものでした。ここで言う3兆ドルというのは、郵政公社に預けられていた総資産(350兆円)に当たります。

 [森田実政治日誌 2005/08/10]
「郵政民営化はウォール街のためか―米国から9.11総選挙の意味についてのメッセージ」
 
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C02040.HTML

 原文はこちら: [The Wall Street Journal 2005/08/08]
 "A Japanese Postal Drama"
 
http://online.wsj.com/PA2VJBNA4R/article/SB112345111091906948.html

 ちなみに、在日米国大使館のサイトには、日本に対する米国の要望を延々と書き連ねた「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」というものが掲載されているのですが、2004年10月に発表された年次改革要望書では、なぜか2007年からの郵政民営化が既定路線になっていたりします。

「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」
 
http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-j20041020-50.html#mineika-s

 郵政民営化が私たちのためではなく米国のために行われたとする見方は、邪推でも陰謀論でもありません。何といっても当の米国政府とウォール街がそれを露骨に公言しているのですから。

 けれども、そのことを知られてしまえば、与党は選挙で勝てなくなってしまう。そこで必要になったのが、有権者を B層化させるような選挙戦略―「郵政民営化是か非か」「官から民へ」といった私たちの思考を麻痺させるような単純なスローガンの連呼―でした。

●参院選に向けて

 B層というのは、現実を正確に反映したモデルというより、権力の側が私たちを一方的に分断し、名づけ、操作するために作り上げた概念だと思います。

 一つ例を挙げると、広告代理店の電通は、1960年代の終わりに「エクストリーミスト」を「過激派」と翻訳しただけで3億円をもらったと言われています。

 いわゆる新左翼集団をひとまとめにする「過激派」というレッテルは、その範疇外にいる人々が当局による「過激派」への人権侵害を容認する社会を作り出しました。現在では「テロ
リスト」という言葉がその一つです。

 6月26日付の読売新聞によると、参院選で年金問題を争点にすると答えた候補(予定)者は、民主党84%に対して、自民党53%、公明党にいたってはわずか46%。

 民主党の大塚耕平議員のレポートによると、「消えた年金」はなんと100兆円規模(>2007年度一般予算)にも及ぶそうです。

 [読売新聞 6/26]
 
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin2007/news/20070626i101.htm

 [政治経済レポート:OKマガジン(Vol.147) 6/24]
 
http://www.oh-kouhei.org/magazine/20070624.html

 これだけの問題をまともに扱ったら、与党は勝てるはずがありません。だから争点にはしたくない。したとしても、政府の対応は適切だったという一言で逃げる。

 問題を作り出した側が説明責任を果たさず、問題を知っている人たちがそれを知らせる努力をしなければ、私たちは自分がB層というレッテルを貼られていることさえ気づかないまま、問題を作り出している側によってたやすく操作されてしまうでしょう。

 このことは、国内問題に限らず、国際社会の目から問題の本質が巧妙に隠されているチェチェンやパレスチナ、イラク、その他私たちが一生知ることすらない多くの―本当に多くの―問題に関しても、同様だと思います。

 参院選の一般的な情報については以下のサイトなどをご覧ください。

 「選挙が面白くなる!参院選全情報」
 
http://www.janjan.jp/sanin/list.php

 B層についてはWikipediaにも解説があります。よろしければどうぞ。

 「B層 - Wikipedia」
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/B%E5%B1%A4

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